「俺は、パソコンはよく分からないんだ」
カイザーの少し照れた顔を見て思い出した。
そうだ・・・!
確か・・・、上に報告する書類は全て翔にやらせていた筈だ。
翔に『ワープロ位は覚えた方が良い』って何度も言われていた。
「そう言えばカイザー、署内のパソコンも弄ってはエラーを出していたような・・・」
つい指摘を口にしてしまったが、カイザーはそれに嫌な顔をせず笑う。
「ああ。メールでもエラーを出せるぞ」
何故、微妙に誇らしげ・・・?
それって自慢出来た事じゃないような・・・。
黙って不思議に思っているとカイザーは気だるげにため息をついた。
「もともと、パソコンなんてモノは、俺とは気が合わないんだ」
照れ隠しの虚勢かな・・・?
「だが、お前は銃と同じ位、パソコンにも詳しいだろう?」
口調から虚勢の色が消えた・・・。
いずれにせよ、頼られているのは確かだ。
こんなオレで役に立つのであれば何も拒む理由なんてない・・・。
「まぁ、一通りの操作は出来るけど・・・」
「それを頼みたい。住み込みで、だ」
「住み込み・・・?」
えぇっ・・・パソコン操作に住み込みで?
「要は、俺の見世話を毎日してくれという事だ」
何だか話が見えてこない・・・。
「賄いとかも、やれって事か?」
「いや」
「はぁ?」
「俺の妻になれ」
妻・・・。
妻?
妻!!!
「は?!な、何言ってるんだよ!!」
「プロポーズだ」
「ぷ、プププププロポーズ!?」
「ふっ。噛み過ぎだ、遊城」
え?
えっ?
えぇっ?
えぇええぇえぇぇっ〜〜〜・・・!!!
何で?どうして?どういう事?
いや、それより・・・カイザーは・・・笑ってる!?
「いや・・・、あの・・・カ、カイザー・・・」
「何だ?」
今のは本当にプロポーズ・・・?
プロポーズって事は・・・
プロポーズっていう事は・・・
「カ、カイザーは・・・えっと・・・」
「お前が好きだ。愛してる」
「ええ〜!あ、いや・・・、嬉しいんだけど・・・」
やっぱりプロポーズ・・・。
カイザーがオレに。
オレにプロポーズ。
でも、それって・・・、それって・・・
「なぁ、遊城。遊城は、俺の事どう思っている?」
澄んだ瞳でまっすぐに見つめられ単刀直入に訊かれたオレは、適切な回答がすぐに浮かばず口籠ってしまう。
「え?あ?オレ??ええーっと・・・えーっと・・・」
なんて答えれば良いのだろう?
オレもずっとカイザーの事を・・・。
でも、プロポーズをされているのにこの状況での回答って・・・?
「俺の事、嫌いか?」
「いや・・・!そんな事はないぜ!す、好きだ!」
あっ・・・!
・・・カイザーに矢継ぎ早に迫られて、つい、本音をそのまま口にしてしまった・・・。
「じゃあ、やる事は一つだな」
「え?カ、カイザー?!」
オレの本音を聞き出すなりおもむろに席を立ったカイザーは静かにオレの近くに歩み寄る・・・。
カイザーの様子が、何だかおかしい。
無言でオレを見つめながら近付くその瞳の輝きは・・・男気溢れるカイザーの今までとは異なる『男』の・・・眼差し?
これって・・・何処かで見た事が・・・。
あっ!
ライオンが獲物を狙う時の眼光・・・!?
そう気付いた時にはカイザーの顔がもう間近に迫っていた。
えぇっ・・・!
「好きだ、遊城・・・んッ」
突然、重ねられる唇。
温かい唇がオレの口を塞ぐと強引に侵入してきた舌から唾液を流し込まれる。
柔らかなカイザーの舌が大胆に動くごとに体中から力が奪われていく・・・。
「ん・・・んんッ」
遠退きそうな意識を保とうと息を吸おうとするが、オレを覆う唇から逃れられずに吐息だけがオレの口から零れた。
幾度もキスを繰り返され、抵抗する気など起こらない程・・・体の芯から痺れだし、いつまでも、この感触に浸っていたい衝動に駆られた。
抵抗しないオレから唇が離され・・・微かな金属音が聞こえた。
「ハァッ、・・・って、カイザー・・・何して・・・・・・」
「何って・・・決まっているだろう」
「え?」
オレが着ているシャツをまくり上げ、カイザーの手が胸元に伸びてくる・・・。
「感じるか?遊城」
胸の突起を舌で刺激された。
「ヒッ、・・・アッ・・・ン!」
感じ過ぎて、体が跳ね上がる。
腰から痺れるような快感が広がっていく。
オレの反応を見て、カイザーは満足そうな表情を浮かべた。
「・・・色っぽいな」
掠れて熱っぽいカイザーの声。
その声を耳にするだけで、体が熱くなっていく・・・。
大きな両の手で、体中を繰り返し撫でられ、時に歯を立てながら、胸を刺激する舌先の動きに全ての意識が奪われていく。
「かい・・・ざー・・・。なに・・・?」
胸の突起を刺激する舌が動きを止めた。
優しく撫で回していた腰元、首筋の手の動きも止まり、胸からカイザーの唇が離れだす。
「・・・こんな不安定な場所じゃなくて、ベッドの上でやるか・・・。来い、遊城」
「・・・え?」
あっという間の出来事だった。
痺れた体に、腰が立たなくなっている所を抱きかかえられカイザーの寝室へ運ばれた。
オレはベッドに投げ出され、すぐさまカイザーが覆い被さってくる。
ベッドのスプリングが大きく軋む。
「遊城・・・ん・・・」
あらためて唇を奪われた。
何度も、何度も・・・繰り返されるキス。
頬に、耳に、首筋に・・・顔中にカイザーの唇が添えられる。
カイザーの唇は熱く、全てを奪いつくすような動きがオレを愛欲だけに溺れさせる。
「んん・・・はぁ・・・」
気が付けば身に着けていた服の全てがカイザーの手によって剥ぎ取られていた。
カイザーの手が、下半身へと伸ばされる。
逞しい指が、熱く潤む秘所へと潜り込む。
「は・・・。ンッ・・・、カ、カイザー、そこ・・・触る、なぁ・・・!」
敏感な所を遠慮なく弄ぶ指先に耐え切れなくなりそうで拒むが、体が求めて静まらない・・・。
「どうした・・・?遊城・・・」
脈打つ熱い箇所を弄る指先の動きを止め、吐息交じりに意地悪に囁く。
求め続けているオレの体を見透かすように耳元に響く、その声に淫らな自分を曝け出す。
「も、もう無理・・・だから・・・」
吐息交じりに答える声が震える。
敏感な所に触れたまま動きを止めている悩ましい指。
止められた指先の刺激が欲しくて切なくて・・・、待ちきれずに敏感な所が誘うように潤む・・・。
「何故だ?」
オレの状態を見透かした上でカイザーは意地悪に惚けた。
『何故だ?』だなんて・・・ズルイ。
「わ、わかってるくせ・・・に・・・!」
焦らされて、焦らされて・・・全ての意識が敏感な場所に集中して恥ずかしいくらいに求めてしまう。
「言葉にしないと、分からないな」
言葉とは裏腹に、カイザーは止めていた指先を大胆に動かし始めた。
「ヤ・・・ッ!んん・・・!」
もう、限界っ・・・。
全身が大きく震えて一気に意識が真っ白になりカイザーの手の中に愛液を溢れさせてしまった・・・。
「ふ・・・。イッてしまったか」
激しい快感に震える中で露骨に『イッた』と口にされ羞恥心が膨れ上がった。
「ハァ・・・ハァ・・・だから・・・無理って・・・」
カイザーの手で、イかされてしまった恥ずかしさに上擦った声で抗議するとカイザーは意味深に笑う。
「だが、これで大丈夫だろう?」
「えっ?」
大丈夫って・・・何が?
乱れている呼吸の為、頭に浮かんだ疑問を口にする前にカイザーの指が増え、ゆっくりと奥深くに沈ませてゆく。
えぇっ・・・!
そ、そんな・・・。
「一回イッたから柔らかくなってるな・・・。だが、もう少し・・・ほぐさないとな」
膣内に・・・根元までカイザーの長い指が踏み込んでくる。
淫らに動く指先の音が耳に届いた。
「んん・・・・・・、いた・・・い」
膝が痛みに震える。
思わず足を閉じようとするが、カイザーの体がそれを阻止する。
「我慢してくれ・・・。その内、それが気持ち良くなる」
「む・・・無理だって、カイザー・・・!オレこんなの初めてだし・・・っ」
「知っている」
三本、四本と性急に指が増え、掻き回される。
気持ち良くなるなんて、信じられない。
そう思っていたのに・・・。
どういう訳か体が蠢く指に快感を感じだした。
愛液が溢れだし、カイザーの手を伝って体を濡らす。
「アッ・・・んッ・・・ひぁっ・・・!」
今まで味わった事のない快楽の津波にオレは思わず声を漏らす。
そんなオレの変化にカイザーは気付き、嬉しそうに口元を緩めた。
押し寄せる快感にもう何も考えられず、オレは身を委ねた。
「・・・もう、俺が・・・限界だな・・・」
溢れる愛液をクチュクチュと濡れた音を響かせていた、逞しい指が引き抜かれる。
「かい・・・ざー。・・・んん・・・はぁ」
もうオレの中に・・・カイザーが・・・カイザーと結ばれる事に不安はなく・・・幾度となく繰り返される快楽とカイザーと一つになる期待がオレを更に陶酔させていた・・・。
「・・・入れるぞ。・・・くぅっ・・・」
ベッドが大きく軋む音を立てゆっくりとカイザーがオレの中に押し入ってくる。
朦朧としながらカイザーを見つめると・・・今まで見た事のないカイザーの昂揚とした表情。
オレを見る目が熱く、甘い。
「・・・んんッ」
カイザーに身を委ね、全てを受け止める。
先程までの指とは比較にならない重圧感。
カイザーがゆっくりとオレの奥に達した・・・。
「・・・じゅうだい・・・ッ・・・ハァ・・・ハァ・・・」
ぇっ・・・!?
幾度も続く快楽に酔いしれる中で初めて『十代』と・・・カイザーに呼ばれた。
「カイザー・・・ッ。あ・・・はぁ・・・ッ」
「ハァッ・・・じゅうだい・・・じゅうだい・・・」
「かい・・・ざ・・・あっ・・・」
「好き・・・だ。じゅうだい・・・」
「オレも・・・ん・・・好きだ・・・。カイザー・・・」
カイザーの楔がオレの中で大きく膨れ上がる。
激しくなる動きを全て受け止めるようにオレはしがみ付く手に力を込めた。
「・・・ん・・・!」
オレの体の奥に、カイザーが放った熱い奔流を感じた。
「ハァ・・・ハァ・・・。アッ・・・んん!」
オレの中で果てたカイザーを抱き締めながら溢れる充実感にいつまでも陶酔していた・・・。